本日は大安吉日「建て前」の日でーす。
心配していた天気も予報が外れて青空がのぞいてます。
・・・・・・・・・。
と、たとえば、今日がそんな日だとします・・・・・・。
こんな日は、大工にとっても晴れ舞台です。だって
自分たちの仕事のお披露目の日なんですから。みんな気合入ってます。
きざみ(加工)終わった柱や梁(はり)、桁などの材料を目の前にして
私も気合を入れ直します・・・・と言いつつ
ちょっと不安に駆られます。
十分確認してしてきたので間違いはないはずですが
私の場合、前の晩はいつもほとんど眠れません。
なさけないけれど、めっちゃ小心者なんです。
「梁の長さが短かったらどうしよう」とか
ホントものすごい憂鬱なんです。
逃げ出したいと、思ってしまうくらいです。
ところで昨日までで、この現場の大工の仕事はすでに
八割以上終わっています。じゃあ、なにやっていたの?
って知りたくありませんか。
はい、では簡単に紹介したいと思います。
お施主さんと工務店との間で最終的にプランが決まりますね。
その図面(平面図、立面図、矩計図など)を元に
作業場で下準備をします。順番にお話していきますね。
◆ 木をどのように組んでいくかという、家の骨組みの図面
(木材の配置図)を書きます。
◆ どの木をどこにどういう向きで使うのか、実際の木
と一本いっぽん対面して検討し、それぞれの場所に配ります。
◆ 木と木が交わる点、すなわち互いに組み合う部分の
「組み方」を決めて、材料に刃物を入れる為の線を記します。
◆ のこぎりやのみを使ってその線に沿って切ったりけずったり
穴をあけたりします。
(電動工具も精度と効率化のためよく使用します)
こうして「後は現場で組上げていくだけ」というところまで
下準備の作業をしておきます。
実はこの作業こそ大工の仕事の核心部分なのです。
言い換えればもっとも重要な作業なのです。
なぜ重要なのでしょうか。
それはこの作業の精度の高さによって、建てられた家が30年で
ガタがくるのか100年経ってもシャンとしているのか
決まるからなのです。
ほとんどの人は建物の外壁にしろ、部屋の内側にしろ、
その表面に現れている「化粧の素材」の品質と加工精度を見て
その建物の価値を判断してしまってます。目に見えるところでしか
判断のしようがないので仕方のない事なのですが。
逆に言うとその建物の本当の価値を知っているのは
造った大工だけ、と言えます。
確かに高級な材料が使われていれば建物の値段は高くなりますが、
本当の建物の価値は目に見えないところにある、と私たち大工は
考えています。
床板や壁や天井が張られてしまうとやがて
隠れて見えなくなってしまう所、
その部分にはその家を支える木の骨組みがありますね。
そこなのです。
本当の建物の価値がわかるところは。そしてそこに
大工の仕事のエッセンスが詰まっているのです。
いかにバランスよく、屋根の瓦とか木材自らの重みに対抗する
木の組み方のアイデアを出せるか。
そしていかに美しさ、斬新さ(オリジナリティー)が
表現できているか、
いかに適切な材料を選択できるか、
さらにいかに加工の精度を高めれるかに、
大工は全神経を注いでいるのです。
仕事の醍醐味を感じるところです。
一番大工らしい仕事と思っています。
切り倒された木材を私たちは扱いますが『生きている』
という表現を使います。
縮みます。ねじれます。曲がります。
割れてきます。呼吸しています。
一本いっぽん表情がちがいます。性質も違います。
そして家の骨組みとしてずっと住まう人々を守っているのです。
そして朽ち果てて土に還るまで生き続けるのです。